なまこ旅行記。

旅行記と生息記。

なまこ旅行記

君は、宮部みゆきを知っているか。

ステップファザー・ステップを久々に読み直したので。

 

 

宮部みゆき?『***』の人でしょ?」

 

タイトルを見た瞬間、こんな感想を抱いた方もいるのではないか。

 

ところがである。

 

宮部みゆき、「***」に入る作品が、異常に多い。

 

いや、それだけならまだ普通、売れっ子なら代表作・人気作が複数ある現象なんて、よくある。

 

宮部みゆきが特殊なのは、そのジャンルの広さである。

  

1.どんなジャンルの作家なの?

 ファンタジー。

特に本を読まない人がまず連想したのは、「ブレイブ・ストーリー」だったのではないだろうか。 

 

 

僕ら世代にはドンピシャだ。

 

Aqua Timezの「決意の朝に」が主題歌だ、という印象が強いかもしれないが、これはまあ今で言えば「異世界転生もの」である。

 

もうちょっと言葉を普通に言うと、冒険ファンタジー。

  

因みにブレイブストーリーって映画のイメージが強いが、漫画版には珍しく20巻以上出ていて、非常に丁寧に漫画化されている作品だから機会があったら目を通してほしい。

 

SFもの

 ザ・ファンタジーだけではなく、サイエンスフィクションも書く。

 

ドリームバスター」という漫画化もされている作品は、読書家ならばすーっと出てくるだろう。

 

 

多分このシリーズ、終わんないけど。

 

時代小説

 ちょっと年齢層の高い読者さんは、「宮部みゆき=時代モノ」という式が算出されるのではないか。

 

正直、僕は最初に知ったのが「ブレイブ・ストーリー」だったので、宮部みゆき=ファンタジー作家の印象が強かった。

 

ところがである。

 

次に読んだのが「おそろし」という三島屋変調百物語シリーズ、という時代モノだった。

 

 

 

 えー…こんな作風変わるのか…。

 

ってくらい衝撃を受けた。

 

いやだって皆さん、時代小説書きとファンタジー作家って結びつかないでしょ。

 

例えば花より男子の作者が劇画・水戸黄門書いてたみたいな衝撃。

 

サスペンス

 なんだかんだ色んなジャンル挙げてきたけど、多分読書家に「宮部みゆきといえば?」と聞いて出てくるのは「サスペンス作家である」と答える人が一番多い。

 

映画化されているだけでも「模倣犯」、「ソロモンの偽証」があるし、そもそもデビュー作が「我らが隣人の犯罪」でバリバリのサスペンスライターなのである。

 

時代小説の欄で挙げた三島屋変調百物語シリーズも謎解きものである(サスペンス関係ない時代モノもあります)。

 

2.本題

前フリがとんでもなく長くなってしまった。

 

僕が今回紹介したかった本題は、「ステップファザー・ステップ*1という作品である。

 

 

 

ジャンルは薄々察せられるだろうが、1で画像で紹介しなかった「サスペンス」。

 

ここからは完全にオタクっぽい書き方になりますが、お許しを。

 

宮部作品、結構な量読んでるけど、僕はステップファザー・ステップが一番面白いと思う。

 

理由はいろいろあるんだけど、「設定」が群を抜いていい。

 

あらすじを言おう。

 

盗みに入った泥棒が、落雷のせいでターゲットの隣の家に落下する。隣家に住んでる双子の中学生に介抱されるのだが、諸事情あって双子の中学生の父親代わりに…?

 

父親代わりになって起きるドタバタに巻き込まれつつ、そのドタバタで出てくる謎を、主人公の泥棒が解いていく、という流れで進んでいく。一本のストーリーではなく、短編集である。

 

僕は今まで紹介してきた本に関してはすべて読破済みである。

 

その上で言えば、他は結構ありふれた場面設定だと思う。江戸の怪談だとか、東京の刑事で、とか、異世界に飛ぶ子供とか、キーワードで作品は特定できない。

 

いやもちろん、そのありふれたものをものすごく面白くするのが宮部さんという作家さんの地力なのだと思うけれど。

 

この本はグーグルで「双子 泥棒」で調べると一発で出てくるくらい、キーワードだけでもオリジナリティがある。

 

この双子のキャラクター性もいい。双子ならではのメタな書き方もなされているし、人を喰ったような正確で、主人公とのコミカルな掛け合いがたまらない。

 

主人公の業界仲間のキャラも立っている。無駄な名前を出して混乱させるわけではなく、「画伯」といった「どんな犯罪をするか」というわかりやすく記号化がなされていて、スムーズに読み進められる*2

 

タイトルもいい。「ステップファザー」とは継父のことであるのだが、最初は弱みを握られて父親代わりとなる。

 

ところが、話が進んでいくうちに情が湧いてきて、父親として違和感なく受け入れられ疑似家族として幸せになって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しまってたら普通の話。

 

 

ここが宮部さんのうまいところで、「このまま父親面してていいのか」「実の親が帰ってきたら」という葛藤にも呑まれるのである。その葛藤のせいで起こるなにか、その葛藤にどう答えを出すのか、というところを書くから宮部さんは宮部さんなんでしょう。

 

 

・サスペンスのトリック

・キャラクター

・オリジナリティのある舞台

・「継父」としての葛藤

・「泥棒」が探偵役

・「泥棒」要素もしっかり出る

 

これらの要素を、短編集で詰め込んでいる。かつメタ的な視点、軽妙な文体で書かれていて、すごく自然と読める。

 

少し時代を感じるものばかりではあるが、秋の夜長に是非。

 

3.最後に

 

本を紹介するときにアマゾンのアドレス貼ってるんですけど、以前の記事(下のリンク)よりも見やすくなったと思うんだけど、いかがですか。

 

 

namakozawa.hatenablog.com

 

それでは。

*1:入手しやすいのは、主にハガレンで知られる荒川弘が表紙を書いている講談社文庫版と、千野えながさんがイラストを描いている青い鳥文庫版の2つ。青い鳥文庫が小中学生対象の本ということでカットされたエピソードがあるため、講談社文庫の方をおすすめしておきます。

*2:完全な余談だが、僕はこの画伯のエピソードが一番好きである。画伯という登場人物の面白さもそうだし、話の舞台となる「くらしき」のアイデアがとんでもないから。「くらしき」ってなんだよっていうのは読んだらわかる。

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